転職エージェントの認知度もすっかり高まり、最近は転職活動するときにまずエージェントに登録する方も多くなってきました。
転職エージェントは使いこなすことができれば、求人サイトからの直接応募で転職するよりも良い転職先やキャリア機会を見つけることができる可能性が飛躍的高まる一方で、一歩間違えると気づかないうちに自身のキャリアダウンに繋がる会社への転職を誘導される可能性もあるサービスであることはあまり知られていません。
特に転職に慣れていない初転心者は転職エージェントとの付き合い方を間違えて失敗するケースが多いと感じています。
そこで今回は転職エージェントを使うメリット・デメリットを整理した上で、転職初心者が良い転職を実現するための転職エージェントの選び方と付き合い方を中立的な立場で紹介します。
転職エージェントの利用する4大メリット
私が考える転職活動おいて求人サイトからの直接応募ではなく転職エージェント使う本質的なメリットは以下の4つです。
- 質の高い求人を保有している
- 市場価値を知ることができる
- キャリアアドバイスをくれる
- ポジションサーチをしてくれる
①質の高い求人を保有している
転職エージェントは企業から依頼を受けて様々な求人を保有しています。求人サイトに公開されていない求人を持っていることも多いので、求人サイトで探すよりも幅広い求人や求人サイトには掲載されていない求人も含めて転職先を探すことができます。
特に有名大企業は求人サイトに掲載すると応募が多すぎて人事が対応しきれなくなるため、求人サイトには掲載せずに事前に候補者を絞ってくれるエージェントを利用する傾向があります。
つまり大企業への転職を検討している場合は転職エージェントが保有する求人を確認しておいたほうが無難です。
②市場価値を把握できる
転職エージェントは様々な転職者と日々面談しているので、あなたと似たキャリアの人の年収や企業からの需要の大きさを把握しています。
エージェントと面談することで今の会社の給料が適正年収であるかを把握することができます。またご自身が他社から欲しがってもらえる人材なのかもわかります。
ちなみに市場価値がないと判断された場合、転職エージェントからは体よく面談をお断りされます。そのため面談に応じるということは、エージェントが転職できる経歴だと判断したことになります。
新卒入社した会社に居続けてる人や人材流動性の低い業界で働いている方は通常自分の市場価値を把握することが難しいので、転職するつもりがなくても定期的にエージェントことで常に自分の市場価値を把握することができるようになります。
③キャリアアドバイスがもらえる
今のあなたのスキル・経験で転職できる会社や選択できるキャリアを教えてくれます。
業界経験が長い人にとっては不要に思えるかもしれませんが、他業界で思いがけないキャリア機会があるケースもあります。
大手コンサルティングファームでは数年前からこれまで社内に存在していなかったAIの専門家やデジタルマーケティングの専門家の中途採用を積極的に進めてきました。当然同じ業界には人材が存在しないので他業界から転職の需要が増加しました。
エージェントを通してこのような動向をキャッチすることができます。
④ポジションサーチをしてくれる
会社によってはオープンポジション採用枠を持っていることがあります。
オープンポジション採用とは積極採用していないが、良い人材がいたら採用するという枠です。
興味のある会社に自分の求める職種での募集が無いときに、エージェントを介して連絡をとってもらい採用枠を作ってもらえることがあります。
以上が私の考える4大メリットです。その他にも面接の日程調整や年収交渉を代行などもメリットとして挙げることはできますが、手間を省ける程度の効果しかなく実際にはわざわざエージェントを使うメリットは上記4つと考えて良いでしょう。
転職エージェントを使う際の4大注意点(デメリット)
エージェントを使うメリットばかりを述べてきましたが、デメリットも当然あります。何も知らない転職初心者が下手に利用すると求人サイト経由で探すよりも悪い結果になること多いのです。エージェントを使う場合のデメリットは次の4点に集約されます。
- 玉石混交である
- 成果報酬である
- 会社ごとに取扱求人が異なる
- 業界内部事情には疎い
①玉石混交である
転職エージェントのことを転職やキャリアのプロだと思っている方がいたらその認識は改めたほうが良いです。
中にはそのような人もいますがどちらかと言えば少数派です。
人材紹介業は未経験からスタートできる参入障壁が極めて低い職業です。みためは経験豊富にみえても実は他業界からやってきた経験1年目未満の新人エージェントが担当につくこともあります。
また経験数年が長いから安心できるわけではありません。求職者のスキル・経験を考えずにとにかく当てはまりそうな求人を闇雲に送ってくる人、1つでも内定が取れたらその時点でねじ込もうとする人などもいます。
一方少数ですが経験豊富であなたのよき理解者となり、転職エージェントを介さなかったら実現し得なかったキャリアへ導いてくれる凄腕の方もいらっしゃいます。
転職エージェントは玉石混交。良いエージェントに担当についてもらえるかで転職活動の結果は大きく変わります。
②成果報酬である
転職エージェントのサービスは基本的に無料です。なぜ無料でサービス提供できるかと言うと、それは企業から報酬を貰っているからです。
そしてその報酬発生要件は求職者の入社です。つまりエージェントは候補者が転職してくれないと儲からない仕組みになっています。
これはエージェント視点では候補者を転職させる強烈な動機になります。転職するか迷ってる求職者がいた場合、転職エージェントは転職を勧めるインセンティブがあるということです。
エージェントによっては本来転職するべきではない人にも転職を勧めてくるので相手の言うことを鵜呑みしないことが大切です。
また転職はキャリアアップよりもキャリアダウンする転職のほうが簡単であることも認識しておく必要があります。待遇がよく挑戦的な仕事ができる良い会社は応募も多いことから要件も厳しく入社難易度は高くなります。
他方、求職者にとって今よりも役職が落ちる仕事や年収が下がる仕事であれば転職は容易です。そのため転職エージェントによっては求職者の長期的なキャリアを考えず内定が取りやすい会社を中心に勧めてくることもあります。
よくあるのは残業が多い職場から転職したい求職者が、待遇が少し下がるけど残業が少なくなる職場を提案されて応募を決めるケースです。
残業が少なくなったので一見転職に成功したように見えますが、実際は残業が少なく待遇も今よりアップしてより長期的なキャリアの展開が見込める求人もあるのに人気があるので紹介されないことがあります。
成果報酬型のサービスにおける転職エージェントにとっての真の顧客は求職者ではなく企業であるということは忘れないでください。
③会社ごとに取り扱い求人が異なる
全ての業界・職種に通じている転職エージェントは存在しません。各自が得意領域をもっており、その領域のエージェントがあなたの担当になります。
しかしエージェントの所属する会社ごとに得意領域があり紹介できる求人が違うことは認識する必要があります。転職エージェント会社が紹介してくれるのは基本的にお付き合いのある企業の求人のみになります。
求人として世の中に存在していても、そのエージェントと会社が契約していなければその求人を紹介されることはありません。
例えばコンサル転職が得意な会社のエージェントはコンサルへの転職については知識も求人も豊富ですが事業会社の転職については詳しくない事が多いです。同様にベンチャーが得意な会社外資が得意な会社など特性があります。
総合型転職エージェントの場合は様々な求人を紹介してくれますが、一つ一つの領域での知識や求人数は特化型に見劣りします。分の希望をある程度明確してない状況で特定のエージェントだけに頼ると自分にマッチする求人に出会えない可能性があります。
④業界の内部事情には疎い
転職エージェントは人材紹介の専門家であって求職者の業界の中の人ではありません。多くの求職者、求人、そして転職事例をみているので企業にどのような需要があり、誰がいくらでどこに転職できるかについての情報は詳しいです。
一方で中長期的なキャリア形成の観点で詳細なアドバイスができる人は相当勉強している一部の超優秀なエージェントまたは元々業界出身でエージェントに転身した人に限らています。
そのため中長期的観点から求職者へのアドバイスは的はずれなことも多く、参考程度に留めておくべきです。
良い転職エージェントをどのように選べばよいのか?
メリットとデメリットを紹介したところで結局どのようにしてエージェントを選べば良いのか?皆さんが一番知りたいことについて回答していきたいと思います。
転職エージェントを選ぶときは次の4つの視点が判断すれば失敗しません。
- 経験豊富なエージェントを選ぶ
- 複数のエージェントを比較する
- 業界特化型のエージェントと総合エージェントを併用する
- 長期間付きあえるエージェンを選ぶ
①経験豊富なエージェントを選ぶ
デメリットの項で書いたように転職エージェントは玉石混交です。経験年数が長い=優秀というわけではないですが、少なくとも素人に近い経験年数の浅いエージェントは回避対象の筆頭です。経験年数が最低3年以上のエージェントを選ぶことを推奨します。
転職エージェントを見つける経路は主に「転職エージェントサービスに登録」と「求人サイトからきたスカウトに返信」の2つがあります。
転職エージェントサービスに直接登録した場合、担当エージェントを自分で選択することはできません。
誰が担当に付くかは求職者のキャリアとそのとき誰の手が空いてるかによります。ある程度キャリアを積んだ人材の場合は基本的に経験の長いエージェントが付くケースが多いですが年収が高くない人の場合は経験の浅い人がつくことが多いです。
経験の浅いエージェントが担当につくことを避けるために求人サイト上のスカウトに返信するか、経験豊富なエージェントのみを揃えた転職エージェントサービスを利用することを推奨します。
ハイキャリア向けの転職エージェントサービスでは経験豊富なエージェントのみしかいないサービスがあります。このような転職エージェントサービスで経験の浅い担当者がつくことはありません。
まだ若手であったり、キャリア的にハイキャリ向けのエージェントサービスの利用が難しい場合はスカウトからエージェントを探すことを推奨します。
スカウトがきたエージェントのプロフィールをチェックする経験年数が書いてあります。この経験年数が3年以上に絞ればOKです。もし経験年数が非公開だった場合、それはすなわち経験3年未満であることを意味してます。
②複数のエージェントを比較する
あなたがはじめて転職エージェントサービスを利用するのであれば最低3人~4人の転職エージェントにコンタクトをとることをおすすめします。
エージェント選びはそのエージェントの能力だけでなく相性も大切になります。何人かと会えばフィーリングの合う合わないや能力の違いを見極めることはできます。
比較には自分の市場価値の確認等、毎回同じ質問を全てのエージェントに対して行ってみてください。回答がエージェントごとに異なり、回答内容を比較することで信頼できるエージェントがわかります。おすすめの質問は「自分の市場価値」「市場動向」「選択できるキャリア」です。
業界に精通しており、数多くのコンサルティングをこなしている優秀なエージェントであればかなり仔細まで解説してくれるはずです。
③特化型のエージェントと総合エージェントを併用する
複数のエージェントから実際にお世話になるエージェントを決める際は、最低でも2社利用することを推奨します。
1つは総合エージェント(リクルートエージェントなど)、もう一つが特化型エージェントです。
総合エージェントでは幅広く様々な業界から自分の可能性を探すことができます。一方で特化型エージェントは特定の業界や職種に特化した求人を大量に保有しています。
総合エージェントから紹介を受ける中で方向性が絞れてきたら特化型エージェントを併用することで良い求人に巡り会える機会が断然増加します。
④長期間付きあえるエージェンを選ぶ
転職エージェントの活用方法として最も有効なのは長期のお付き合いです。本格的に転職活動を始める段階でエージェントに登録する方が多いですが求人は水物なのでそのときにベストな求人があるとは限りません。
そのため自分のスキルや意向を伝えて定期的にマッチしそうな求人を送ってもらい、良い求人があれば応募するというスタンスで利用すると良い転職先にめぐり逢いやすくなります。
この方法をとると短期間でどこかの会社に押し込むように転職させる、数を稼ぐタイプのエージェント自動的に弾くことができるのでおすすめです。
まとめ
メリット・デメリットを把握した上で使いこなせれば転職エージェントは求職者の転職活動にとって非情に心強い存在です。
一方で転職になれていない求職者がカモにされてしまう事例も多々あります。今回の紹介した内容を実践してぜひとも上手く使いこなしてください。
あとがき
この記事ではなるべく中立的かつ客観的な姿勢でエージェントを活用する方法について書きました。が、最後に完全に主観による個人的な意見を述べたいと思います。
改めて文字に起こしてみて成果報酬型である点が求職者にとって本当にマイナスだなと感じました。
人材紹介業は慈善事業ではないので期ごとにチーム、個人の売上目標を設定している会社が殆どです。期末は目標まであと何百万足りない、◯◯さんが最終に受かって承諾すれば届きそうだという皮算用がなされています。
求職者はお客様ではなく真の顧客である企業に紹介する「商品」と表現したほうが現実に即してる気がします。エージェントが求人サイトで行うスカウトはいわば「商品の仕入れ」です。
ビジネスの構造上お金を払ってくれるのは企業、長期のリレーションシップを築く対象も企業、それに対して求職者は殆ど場合リピートをしない一見さん。どちらを向いて商売したほうが儲かるかは火を見るより明らかです。
もちろん親身に相談に乗ってれるエージェントや優秀なエージェントは存在します。しかしビジネス構造的に求職者が「商品」の立場になってしまうのは変わりません。
とはいえ転職エージェントを使うメリットも沢山あります。求職者は自分がエージェントの顧客ではなく、商品であるということを理解した上で上手く使うことが求められているのだと思います。